真似しちゃいけない、タイミングベルト交換


 '92に購入、7年以上私の財布から修理代を吸い続けてきたデルタ君を手放すことにしました。最後のご奉仕、ということで納車点検(^^;をやっていたところ、タイミングベルトがヤバいことが判明、ついに禁断のタイミングベルト交換をやることを決意しました。
 いろいろとネタの多い、デルタのタイミングベルトはピレリ製。寿命は2万キロと言われていますが、6000キロ程度で切れた例もあり、油断できません。私のは1万キロほどしか走っていませんが、3年経っています。あまりに切れやすいためか、16Vの後期型以降(エボ2まで)はタイミングベルトの形状が変わっています。コマの数が増え、冷却用(?)の溝が切ってあるタイプですが、幅が細くて頼りないのは相変わらず。対策型でも2万キロで交換というのが推奨のようです(^^;わざわざカムスプロケとクランクプーリーを対策型に取り替えている人もいるようですが、ご苦労なことです。で、いつも問題視されるのが劣悪な作業性の悪さ。横置きエンジンのデルタはベルトカバーとフェンダーの隙間が2cmくらいしかなく、いきおい、工賃も割高なものとなっています。で、私のデルタは純血の前期型(^^;です。
 なお、今回の解説はわざと大ざっぱなものとしています。なぜなら、
  1. 特殊工具を使用する場所があること
  2. 万が一失敗すると取り返しのつかないこと(バルブクラッシュ→ヘッドOH)になること
  3. エンジンに対する基本的な知識が必要なこと
  4. 今回はバランサーシャフト駆動ベルトを切ってしまったこと
 したがって、繰り返し言いますが全ての作業はオウン・リスクで行って下さい。また、初めて作業する場合にはプロの立ち会いが絶対必要です。「修理代を浮かすために」などというフトドキな動機で始めると、取り返しの付かないことになると思います。わたしゃ、一切の責任を負いません。

 ベルトカバーの上2本の10mmのボルトをはずし、ベルトの状態をチェックしています。これは比較的軽度の状態。ベルトの背面がツヤ消しになってます。ただしテンションプーリーと擦れるためにうっすらと裏側からだんだら模様が見えてきます。劣化が進むとここがツヤツヤになってきます。そうなると即交換です。あとはベルトをめくってみると、カムスプロケとのかみ合いに隙間が生じてきます。これはコマの側面が減ってきているのです。

 作業はB's GARAGEで行いました。肝心のタイベルのテンション調整はプロのご指導が必要なのね。
 まず、バッテリーを外し、バッテリーの台座も全てはずします。次いで、クルマのフロントをジャッキアップ、ウマをかませたら右タイヤを外し、右インナーフェンダーを外します。

 バッテリーをはずした状態。この後、台座も全て外します。

 デルタのオルタベルトはテンショナープーリーをヘキサゴンのボルトを締めることで張っています。これを回す前に13mmのボルト2本を緩めておきます。このヘキサゴンボルトはエアコン・コンプレッサーの前、アイドルスピードコントロールバルブ下あたりにあります。これの根本には17mmのロックナットがあり、とでもじゃないけど普通のレンチが入る隙間はありません(^^;で、17mmのクローフット・レンチが必要です。フューエル・ホース、エアコン配管をかき分けロングエクステンションを突っ込み、無理矢理回す必要があります(^^;私のは並行車なのでディーラー車と違ってエアコン・コンプレッサーのステーが邪魔で、エクステンションが入らず、やむなくインジェクターへのフューエルホースを外し、コンプレッサー駆動ベルトのテンション・プーリーも緩めました(; ;)
 ベルトが緩んだらクランクプーリーとセンサーのプレートを外します。これのヘキサゴンボルトの締め付けトルクは大したこと無いのでプーリーの回り止めは必要ありません。で、オルタベルトをはずします。
 それからエンジンのトルクロッドを外し、エンジン側のトルクロッド受け台座(?)を外します。次いでベルトカバーを外します。ベルトカバーの取り付けボルト下2本はやたら狭いスペースでの作業になります。忍耐....

 左上がオルタベルトのクランクプーリー、左がトルクロッド受け台座(?)、右がベルトカバーです。

 やっと見えてきたこの風景。白矢印はおなじみ「バランサーシャフト駆動ベルト」です。このフィアット・ツインカム・ユニットがテーマに積まれるにあたり増えた装備です。偏心した重り付きのバランサーシャフト2本を回すとエンジンの振動と打ち消し合うというシロモノ。このエンジン搭載車に特有の「ひゅうううう」という音はこのシャフトの駆動ベルトの音らしいです。実はこのシャフト駆動によりフリクション・ロスは増えます。切ってしまってもなんら問題ない(振動が体感できない)という実績もあるのでこの際、ニッパで切ってしまいます。そうすると左側の黒い金属プレートをはずさないで済みます。もっとも、達人はこのプレートをはずさなくてもバランサーシャフトの交換ができるそうです。で、赤矢印はタイミングベルトのテンションプーリーです。

 で、矢印のクランクシャフト・ボルトにレンチをかけ、右へ回していきます。プラグは4本とも抜いておきます。このエンジンの合いマークは4番ピストンの上死点で合わせます。4番のプラグホールにエクステンションバーを突っ込み、一番上がった点が圧縮上死点となります。

 この状態で、カムスプロケは写真のように合いマークがエンジン側と合っているはずです。

 クランクシャフト・ボルトは逆ネジで、もの凄いトルクで締まっています。回り止めツールがないため、インパクトレンチを最大パワーにして緩めます。締め付けトルクは19kgmだそうです。これでバランサーシャフト駆動プーリーが外れます。

 これでクランク側が拝めます。クランク側も合いマークが合っているはずですが、私のは何故か半コマぶんずれています。以前ベルトを交換していただいたとき、この部分を修正したらとたんにエンジンが吹けなくなり、もとに戻して貰った経緯があります。さわらぬ神にタタリなし、このままで行きます。

 でテンショナーを外し、ベルトを外してしまいます。テンショナーのベアリングは、まだイケそうだったので交換しませんでした。ベルトも比較的OKな状態でしたが、若干伸びていました。
 新品ベルトをかけたらテンショナーを仮止めし、クランクシャフトを2回転させます。合いマークがずれていなければOK、テンションを張り直します。このテンションは緩いとベルトがたわんでバタバタ暴れ、強いと呆気なく切れるそうです。私は10回以上張り直し、やっとOKを貰いました。
 あとは順番に組んで行けばいいのですが、最大の難関はベルトカバーのボルトです。ベルトカバーとトルクロッド受け台座(?)を一緒にセットするのですが、ベルトカバーの1のボルトが大変。裏側の樹脂製のプレートの埋め込みナットと友締めになっていて正にイライラ棒状態(^^;うまくいけば5分で付くが、ヘタすると1時間くらいかかるらしい。私の場合は運良く15分でOKでした。次に2のボルト。これもヤッカイで、ついにブチさんに取り付けて貰いました。3の穴はズルをしてタイラップで固定してしまいます。あとはもう、手を血だらけにしながらの取り付けです。知恵の輪状態のデルタのエンジンルームはなんとかして欲しいところですが、もうデルタに乗ることはないでしょう(^^;

 で、ドキドキしながらエンジン始動。幸い一発でOK、つい歓声を上げてしまいました。完全にヌケ切った表情(^^;
 バランサーシャフト駆動ベルトを切ったため、あの「ひゅううう」の音は無くなりましたが、振動は体感できません。意味あるのでしょーか?(^^;
 朝の10時に始めて、夕方7時にはケリがつきました。いつも「痛いなぁ」と思っていたタイベル交換の工賃ですが、自分でやってみて初めて、その工賃の意味を思い知らされた気がします。ブチさん、H間さん、本当にありがとうございました。これでひとカワむけたオトナになれました。


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