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北村義人 試聴室

北村義人は痛みを歌う・・・

「何も悪くはないんだけれど 何だかしっくりといかないんだよね」
「全然かみ合ってもいないのに 寂しさばかりを押しつけないで」
『雨のうた』

「矛盾だらけのぼくの人生が言い訳を許さずここにある
ぼくの限界をはるかに超えてゆく 現実に対しての敗北がある」
『くらやみ』

「思いの果てに手をのばしても 最後のところがかすんで消える
これが迷いというものなのか 無性に酒でも飲みたくなった」
「正真正銘これがぼくの切なさだ 愛を求めて止まない命の源流だ」
『源流』

「ごめんね・・ごめんね・・情けないぼくですね
これでも流されないようにとがんばってるんです・・
これでも失くしてしまわないように懸命なんです」
『ごめんね』

もう10年ほど前、すごくいい歌をうたう人がいる・・と教えてくれたのは江古田マーキーのありのぶ店長(当時はまだ店長ではなかったかな?)だったと思う。
そんなに言うのなら何かのついでに・・
(たぶん六弦舎仲間の水谷さんと同日ブッキングだったのだろう)
・・ぐらいの感覚で聞き始めた彼の歌声は、なんだかとても哀しげで、その歌詞も、なぜか上手くいかない自分の情けなさを、何もそこまで、と思わせるほど自分自身に向かって吐き出している感じで、かなりの衝撃力があった。
むきだしなために傷つきやすい心が歌う「うた」・・
僕はそのとき、ザ・バンドのリチャード・マニュエルのことを思い出していた。

個人的な「傷」「いたみ」「憂い」・・といったものは、いざ言葉にしようとするとやけに愚痴っぽくなったり、恨み言のようなものになりやすい。
あるいは他者への単純な攻撃や、無責任な責任転嫁になったり・・。
でも北村義人の歌は少し違っている。
「思い・気持ち」というものを的確な言葉で正確に言い当てているように感じられる。
これはたぶん「詩人」の仕事なんだろうと思う。

以前、江古田マーキーに出演していた有馬基くんに教えてもらった話。 あるとき有馬くんが北村義人に、
「どうして僕ら(シンガー・ソングライター)は社会からはじかれてしまうんでしょうね」
と聞くと、彼はこう答えたそうだ。
「他の人より少しだけ自分を見つめる時間が長いからでしょう」。

北村義人は「いたみ」を歌う詩人である。
生きることにちょっぴり不器用な人たちすべてに、彼の歌を聞いてほしいと思う。

(2009年7月:高田彰)

雨のうた

「雨のうた」を試聴する

誰とも話をしたくないのなら
一人でどこかに 行っちまえばいいだけさ
つらい気持ちを ごまかしてまで
一緒にいる必要もないだろう
愛想笑いもいらないさ
心配りもいらないさ

そうさ雨にうたれてりゃいいさ
そうさ雨にうたれてりゃいいさ

何も悪くはないんだけれど
何だかしっくりといかないんだよね
だけどそれもやっぱり自然の成り行き
あとは黙って身を引くだけさ
あやまることなんてないさ
お互いさまだったんだから

そうさ雨にうたれてりゃいいさ
そうさ雨にうたれてりゃいいさ

わかりあおうなんて よく言えたものさ
こんなにわだかまりが残っているのに
全然かみ合ってもいないのに
寂しさばかりを押しつけないで
あなたはどうにも変わらない
だけど変わってほしいとも思わない

そうさ雨にうたれてりゃいいさ
一人雨にうたれてりゃいいさ


くらやみ

「くらやみ」を試聴する

報われるあてもない苦しみが
終わることなく続いてる
夜と朝を孤独にめぐり
うつろな祈りささげている

ぼくを引きよせる 暗闇がある
死んでしまえと ささやいている

現在までぼくを導いてきたものが
すべてをまきこんで弱らせてていた
不信を孕んだ運命の中で
眠れずに心がふるえている

ぼくを引きよせる 暗闇がある
死んでしまえと ささやいている

矛盾だらけのぼくの人生が
言い訳を許さずにここにある
僕の限界をはるかに超えてゆく
現実に対しての敗北がある

ぼくを引きよせる 暗闇がある
死んでしまえと ささやいている


源流

「源流」を試聴する

腕や足がずきずきと痛むから
駅のベンチでしばらくじっとしていよう
帰りの列車を待つ人たちの間で
何かにはぐれた気分になってる

働かなければ暮らしてゆけないと
近頃つくづくそう感じてる
夢とかこだわりを捨てたとしたら
どんな男になってゆくだろう

正真正銘これがぼくの悲しみだ
安らぐことなき命のままを生きているのだ

何度も同じ石につまづいて
理屈を言っては逃げ回ってた
そんな昔のなげかわしさに
ぼくは結局追いつめられた

ためいきついても しかたがないと
わかっていながら ためいきをつく
愚にもつかない バカバカしさで
明日はどれだけ 打ちのめされるだろう

正真正銘これがぼくの苦しさだ
みっともないほど涙にぬれて ここにいるのだ

思いのはてに手をのばしても
最後のところがかすんで消える
これが迷いというものなのか
むしょうに酒でものみたくなった

正真正銘これがぼくのせつなさだ
愛を求めて止まない命の源流だ

愛を求めて止まない命の源流だ


ごめんね

「ごめんね」を試聴する

君を困らせることばかり
どうしてぼくは言ってしまうのだろう
わがままに生きてきたわけじゃないのに
君の心を少しづつ傷つけてる

自分で作った小さな苛だちさえ
しずめることができなくなっているんだ
やけっぱちになるほど辛さが増してゆく
君はぼくをあわれに思っているはず

ほほえんでいる 君のはげましを
どうしてぼくは素直に受け入れないのか

ごめんね・・ごめんね・・情けないぼくですね・・
これでも流されないようにとがんばってるんです

いつもあれこれと悔やんでばかり
まるで君のせいだとかんちがいするほど
偽ることなく愛しているはずなのに
君の心は少しづつ傷ついてゆく

自分のなかに虚しさを見つけるたびに
求める世界がどんどん離れてゆくようだ
楽しいときでも笑えずにうつむいてる
君はぼくをあわれに思っているはず

金が欲しいとか 金さえからんでなかったらとか
そんな言い方しかできないぼくを
君はじっとみつめてる

ごめんね・・ごめんね・・情けないぼくですね・・
これでも失くしてしまわないように懸命なんです


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