リトル沖縄

2006年10月29日

 Yっちを銀座まで送って部屋に戻る。部屋の掃除をしたり書評を書いたり洗濯物を畳んだり。夜は最近お疲れ気味のM谷さんを誘って銀座のリトル沖縄へ。僕の知る限り、東京では一番美味い沖縄料理屋だと思う。以前は予約を受けなかったのだけど、昨日電話してみたらできるようになってました。東京で「ゆしどうぶ」が食べられる店もあまりないはず。写真はあちらの鯛のバター焼き。Yっちと3人で話も弾む。泡盛飲んでへろへろ。

リトル沖縄
電話: 03-3572-2930
住所: 東京都中央区銀座8-7-10
定休: 無休
平日: 17:00 - 03:00
土曜: 16:00 - 24:00
日祝: 16:00 - 24:00




マイノリティーの拳 林壮一

2006年10月29日

 「やだ!やめてよ!」
子供の頃、父がボクシング中継にテレビのチャンネルを合わせるたび、母親は金切り声を上げてこれを拒否した。若い頃腕っぷしが強かった父は、戦後の闇市でもストリートファイターぶりを発揮していたらしい。そのせいか、プロ野球が大嫌いだった父もボクシングと相撲は好んで観た。それにひきかえ昭和19年に甲府で空襲に会った母は暴力を極端に嫌った。母親が顔を背けたテレビの画面を見ると、真っ黒な大男たちが殴り合っていた。それがカシアス・クレイ(モハメド・アリ)だった。汗で黒光りする躰がゆさゆさと揺れている。幼い頃からひ弱で痩せっぽちの僕は恐怖を感じた。僕は母に似たのかも知れない。ボクシングもプロレスも大嫌いになった。
 この本はそんなヘビー級ボクサーたちのインタビューをまとめたものである。それも、ゲットーから這い出してきたマイノリティばかりの。マイク・タイソン、ホセ・トーレス、アイラン・バークレー、ティム・ウィザスプーン、ジョージ・フォアマンたちはいずれも頂点を極めはしたが、結局はプロモーターに利用され、搾取されただけであった、という事実は僕にとっては特段驚くに値しなかった。僕がよく知るジャズ・ミュージシャンとさしたる違いはなかったからだ。マイルス・デイビスやアート・ブレーキーも差別と戦い続けた。「貧困と絶望から這い出すためにはボクシングしかなかった」ボクサー達は口を揃える。驚いたことに、「○○みたいなヒーローになりたかったからボクシングを始めた」というボクサーはこの本には居なかった。ゲットーから抜け出す手段に過ぎなかったわけだ。
 僕はボクシングというひとつのスポーツを極めた男達の記録、というふうに読みとることにした。彼らは敗北によって人生を学び、家庭を守ったり、聖職についたりして人生の残り半分を迎えようとしている。それは僕も43歳となった今でこそ、意味を読みとれる部分であったりするのかも知れない。ティム・ウィザスプーンの良きババぶりに好感が持てました。でもやはりボクシングは好きではないなぁ。


マイノリティーの拳

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