「ミスター・ヴァーティゴ」 ポール・オースター著 柴田元幸訳
2007年03月27日
ポール・オースターは「ティンブクトゥ」に続きこれで2冊目。どうもこのひとの小説は途中からペースが変わるようだ。イェフーディ師匠に出会ったウォルトが、かりそめの家族を得てやがて師匠の言う通り本当に空を飛べるようになる。そこへ至る展開はオースターの最も描きたかったところだったのだろう。ぐいぐいと読ませる。ところが、やがてウォルトはすべてを失う。空から落ちるようにまさに「すとん」と。ここからの流転の物語は小説の半分を占めているのだが、前半とは一転、オースターは彼に残酷な運命を浴びせるようになる。いわば「喪失の物語」とでもいうべきか。決して起承転結な物語ではない。話は途中でちょきん、と終わる。僕は読んでいて面食らってしまった、「あ、これでオシマイか」。小説にそういう完成度を求める人には向かない本かもしれない。でも、よく考えると人生ってこうやって「ちょきん」と終わるんだよね、きっと。僕的にはいろいろ思うところがありました。★4。
ミスター・ヴァーティゴ
- ポール オースター
- 新潮社
- 740円
livedoor BOOKS
書評/海外純文学
コメント
TBさせていただきました。
前半もよかったですが、後半も俺は良かったです。
悪ければ悪いなりに生きていかれる。
ウォルトの人生に思いを馳せてしまいました。
Posted by タウム at 2007年04月16日 23:52
トラックバックありがとうございます。
しかし、文字化けで読めないようです。
Posted by Min^2 at 2007年04月17日 15:25