小さくて強い音

2007年07月11日

 テレビは滅多に見ないけれど、夜はNHK教育がつけっ放しのことが多い。毎週水曜の夜中、荘村清志さんのクラシックギター教室を見てる。で、結構上手い生徒さんにサジェストする、荘村さんのひとことひとことが示唆に富んでいて興味深いわけね。あるときは「コードチェンジが難しければ、そこだけテンポを下げたり、ひと呼吸おけばいいんですよ。音楽的には何も問題はない」とか、昨晩の「mp(メゾピアノ)にこそ音楽の神髄があると思いますね」つーのがなかなか凄い。
 昔、FMの番組である女性アナウンサーが渡辺香津美氏に大胆な質問をした。
「香津美さん、最近ギター演奏でこころがけていることはありますか?」
「うーん、小さくて強い音を弾くことかな。」
「え?あ?あー、流石ですね。なにか仙人みたいな境地なんでしょうか。」
僕も当時はその意味をつかんではいなかったかも知れない。
 一時期アリバンドはそのライブの後半で観客席の中をバンドが練り歩く、ってパフォーマンスをやっていたことがある。もちろん名手有田さん、西海さんもDIのジャックを引っこ抜き、生音になる。その時びっくりしたんだけど、ふたりともギターの音量がめちゃめちゃ小さいこと。もちろん手の振りを見ていて、「かなーり軽いピッキングなんだなぁ」とは思っていたんだけど。その後、マイミクの奥沢さんに思い切って聞いてみたことがある。「プロのギタリストってみーんなピッキングがめちゃくちゃ軽いですよね」そしたら、「軽く弾くのは練習だよ、練習」と言われてしまった。小さな音が出せるということは大きな音を出すことなど造作ないのだ。そこに音楽のダイナミクスが生まれる。
 前にアリさんの伴奏をさせていただいたときに言われたことがある。「ベース音をもっとはっきり出さんと。」その時は一生懸命5,6弦をフラットピックでひっぱたいたんだけど上手くいかなかった。いま、ようやくわかってきた気がする。ベース音がでかいんじゃなくて、その他の弦を弾く音、要するにブンチャ、ブンチャの「チャ」がデカすぎるのだ。名手西海さんのバッキングをよーーーーく聞いているとわかるが、ヘタすると「チャ」が聞こえないこともある。歌や、他の楽器のじゃまをしないのはこういうワケなのだ。西海さんもそうだけど、佐久間順平さんもめちゃくちゃ上手いと思う。
 いまをときめくジャズギタリスト、鬼怒無月さんが大学時代、僕に聞いてきたことがある。「Min^2君さぁ、ピッキングって強いよね。オレも強いんだけど、ジョン・アバークロンビーみたく弾きたいなぁと思って軽く弾く練習してみたんだよ。そしたら全然ダメなの、あきらめたね」鬼怒無月もジョン・スコフィールドもラリー・コリエルもすげー、ハードピッカーだよな。ま、こういうひとたちは別か。



コメント

たまには真面目にコメントしてみよう(^^;)。
私はダイナミクス(大きな音)が出せて初めて小さな音が活きると思っています。で、小さくて強い音=小さくて芯のある音は次のステップなんですよね。
私も小さな音の重要さが分かって来たのはここ数年です。

そうそう、デカイ音を出せるっていうのが大前提。
ドラムだろうと、サックスだろうとピアノだろうと上手いひとは音がデカイ。
だからこそ中級クラスの生徒さんや視聴者に、荘村さんのアドバイスがどれくらい理解されてんのかなぁ?と思っちゃうわけで。

あと、ドラムの場合は「上手いヤツは音がデカくても五月蝿くない」ってのもありますな。
僕ごときが言うのもなんですがその点、佐藤君はほんと素晴らしいドラマーになりましたよね。マジで。

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