かんだやぶそばの火事

2013年02月19日

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 まさかそんな場所に居合わせるとは。。。そんな感じ。初めて行った有名な「かんだやぶそば」。大正12年建造の歴史的な店構え、まさにさっきまでYっちと板わさと熱燗で一杯やっていた店が燃えあがるのを、呆然と見上げるしか無かった。そして涙が込み上げてきた。
 この日、僕は会社帰りにYっちと待ち合わせて「おでんでも行こうか」「乗った!」という感じで神田の老舗「お多幸」へ。ちょっと濃いめの味付けの東京おでんをキクマサの熱燗でやって、3合ほど飲んだところで、僕が提案。「神田まつや」の蕎麦で〆よう。ふたりで夜の神田の街を歩いて淡路町まで。するとなんとまつやは満員で外で待ってる客もいる。「よし、じゃ、薮だ」とYっちが言い放ち、僕ははじめてのかんだやぶそばへ。前から、この店構えを見ていて「かっちょいいなぁ」と思ってたけど入ったことはなかったんだ。
 僕らが店に着いたのが7時ちょい前。ラストオーダーが7時半ということを確認して、帳場の斜め向かいのタタキのテーブルに陣取って、またまた熱燗を1合ずつと板わさを注文。うーん、かまぼこ二切れかい、と思ったが食べてみると超高級なかまぼこ。本わさびも美味い。お店にはお客が20人ほど。接待と思しきサラリーマンなんかも居た。7時15分ころ、そろそろ〆ようかとせいろを2枚ずつ注文、独特な「4枚さぁ〜ん」というお運びさんの声を聞きながら熱燗をやってるときだった。
 店内の照明のうち、一列だけが突然消えた。一列といっても4灯か5灯くらいだったから店内が若干薄暗くなるだけで、気がつかないお客さんも居たくらい。よく、お店の壁によっかかったりして、照明のスイッチを切ってしまったりすることがあるけど、そんな感じ。店員さんも「ちょっと調べてきますね」って感じだった。そこで、火災報知器がけたたましく鳴る。こういうときの火災報知器ってほとんど誤報だったりするから、一部のお客さんも「やれやれ」って感じで壁の報知器を調べに行く始末。
 そうしたら今度は帳場の裏からかすかに煙が。女将は「消化器、消化器」なんて言ってる。え?マジですか?ボヤ?なんて言ってたら、二度目の火災報知器が鳴る。消化器を持って奥へ引っ込んでいった店員さんが戻ってきたとき、女将が店内に向けて穏やかに、そして確実に言った。「お客様、お荷物を持って外へ出て下さい」「お代はいいですから」
 え?なに?そんなに大変なの?その声を聞いて、Yっちはなんと「トイレ行ってくる」と言ってトイレに行ってしまう。僕はダウンジャケットを着て、マフラーを巻いた時点で僕以外のお客さんは誰もいなくなった。女将の穏やかな宣言とうってかわって、緊張の面持ちの店員さんが僕に「早く出て下さい」と言う。ようやくYっちがトイレから出てきたのでいっしょに店を出た。
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 店を出て、振り返ったのがこの写真。なんとなく煙が。お客がすべて出たのを見計らって、女将が店内に入ろうとしたら、煙が回ってしまい、入ることはできなかった。ええ?どこが燃えてるの?なんて思った瞬間、店の裏手から火の手が見えた。それが一枚目の写真。うわー、こりゃヤバいよ。見てたら泣けてきた。かんだやぶが燃えちゃうよ。tweetするとリツイートの嵐となる。「直前に照明が消えた、漏電かも知れない」と書いたら、「神田やぶ火事、漏電が原因」なんて書いてるやつが居たので「ガセネタ流すんじゃねーぞ」とtweet。こうやってデマが広がるんだなと、身を以て痛感。
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 そのうち見てるこっち側にも煙が回ってきて、こんな感じに。警察もやってきて規制線も張られ、野次馬もわらわら集まってきた。Yっちが「もう、イヤだから行こうよ」「そうしよう」と現場を離れた。帰りがけにかんだまつやの前を通ったが、その辺りまで煙で真っ白だった。
 なんだかそのまま帰れなかったので御苑のバーに寄る。僕もYっちもやたらと体中焦げ臭い。さっきの体験を話しながらNHKのテレビ見たら、現場はもの凄いことになってるじゃないの。それにしても女将の落ち着いた行動のおかげで誰一人としてけが人も出なかったのは不幸中の幸い。
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 翌日、現場へ行ってみると報道陣と警察でごった返していた。見た感じだと大したことなさそうだが、中はどうなってることやら。その後の報道発表ではやはり、老朽化した配線のショートが原因らしい。それにしても一日も早い復活を希望します。ああ、そば食べたかった。そして、熱燗2合と板わさの代金払いに行かないと。



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