Garage Bandで簡単宅録(1)

2013年03月25日

 Macに標準で付いてくるGarage Bandで簡単にCDを作ろうという企画、結構固まってきたので新規カテゴリーを追加して順次解説してみることにします。なお、わたくしは音響に関しては完全なる素人ですのでよろしくです。
 コンセプトとしてはなるべく簡単な機材で弾き語りメインのCDを作ろう、というもの。弾き語り、と言っても完成形がそうなるだけで、製作としてはマルチで録音してオーバーダブしていく方法。曲はすべて友人である、ありのぶやすし(vo,g)のオリジナル。アレンジとギター演奏は主に僕が担当、一部の曲はピアノメインでアレンジする。。。というのがおぼろげな発想。録音は主に僕の自宅マンション。最近のマンションは防音が結構ちゃんとしてますが、もちろん近所を救急車が走ったり、改造マフラーのバイクが走ったり、廃品回収のトラックが来たりと、障害は多いです。それでもレンタルスタジオで録音するのと違って、料金もかからないし、じっくりと納得がいくまで撮り直しができるというのは大きなメリット。トライ&エラーを繰り返す僕ら素人にとっては好都合です。
では、機材の紹介を。
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 いちばん大事なマイクはオーストラリアはRode社のコンデンサーマイク、NT2。本格的コンデンサーマイクというとノイマンが有名だけど、1本20万円くらいしたりする。このNT2は2万ちょいで買えるコンデンサーマイクとして一世を風靡したもの。ライブハウスなんかにあるダイナミックマイクのシュアーのSM57なんかに比べると、その音質の差は歴然。ヴォーカルなんて、耳元でささやかれてるみたいにリアル。演奏者の座っている椅子のギシギシ音、シャツの擦れる音、全部拾っちゃうので注意が必要。それに衝撃や湿度に弱いから、取り扱いもデリケート。そして大きくて重いから、マイクスタンドも頑丈なヤツを買わないとダメね。マイクスタンドからの衝撃を吸収するためのサスペンションホルダーは、マイクに付属のものを使ってます。録音時は部屋の窓は全部閉め、カーテンも引いてエアコンはオフすることになる。携帯電話のブルブル音も拾っちゃうので、オフだね。本体にはローカットスイッチがついてるので常時オン。そのままだと低域をかなり拾うから、結局はイコライジングが必要になるからね。これはヴォーカルでもギターでも同じだと思った。コンデンサーマイクなのでDC48Vのファンタム電源が必要になる。オーディオI/Fか、マイクプリアンプをかませて供給します。ファンタムをオンにした状態のマイクケーブルをいきなりマイクに刺すと破損することがあるらしいので注意。
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 真空管マイクプリアンプのART Tube MP。デジタル録音だと、無機質な音になるところを、超アナログな真空管を通すことによってまろやかな音にする、というマイクプリアンプ。5,000円以下とリーズナブルなのも魅力。真空管式なので暖まるのに時間がかかる。録音の30分以上前に電源を入れておくことがポイント。コンデンサーマイク用のファンタム電源もこれから供給。20dBのブーストスイッチや、ポラリティ反転スイッチも装備。ただしノイズが若干多いのが玉にきず。入力レベルを入念に調整しておかないと、あとで撮り直しのハメに。。。。(汗)S/Nを良くするには、なるべく入力アンプで歪む寸前までゲインを稼ぐこと。曲によってアルペジオなのかカッティングなのかでこまかく設定を変えること。そしてヴォーカル録りのときはマイクとの距離をキープすること、がポイントと感じました。
 アコースティックギターのマイキングについてはいろいろ流儀があるようですが、僕はサウンドホールの真ん前30cmのところに置き、そこから斜めにネックの12フレットあたりに向けるようにしています。ヴォーカルのときは、直接マイクを吹かれないように口の斜め上にセッティングして、声帯あたりを狙うようにします。もちろんポップガードもつけます。
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 録音用のパソコンとのUSBオーディオ・インターフェースはRolandのQUAD-CAPTURE UA-55を使用。2万ちょいと実はリーズナブル。コレ、本当に凄くいいです。本格的なヤツは10万以上するんですが、これで十分ですよ。しかも普段はiTunesに溜めた曲データをこいつを経由してオーディオアンプに入力して音楽を楽しんでます。これ使うとPCから直接スピーカーに繋ぐなんてできなくなります。かなり音いいです。僕はオーディオマニアじゃないのでこれくらいで全然オッケー。
 録音でも使い勝手は良好。ゲインの調整も楽だし、取説は日本語だし(コレ、大事)PC側のドライバソフトもWindows、Macともに楽チン。マルチトラックのレコーディングでは、すでに録音した音源(例えばギターのバッキング)を再生しながらヴォーカルを乗せて行ったりする作業になりますが、音源とリアル音との間でタイミングが遅れる現象があります。これをレイテンシーというのですが、僕がやってみた限りではほとんど感じません。技術は進歩してますね、ホントに。何も言うことはないQUAD-CAPTUREですが、フロントパネル側のヘッドフォンモニタ出力部だけは結構ノイズがでかい。なので、写真のようにバックパネルの普通のアウト端子からモニタしてます。そして、ヘッドフォンのL側を抜いてあるのは、ちょっと理由があります。(後述)
 あと、USBバスパワー駆動なので電源要らずなんですが、しょぼいPCだと電流が足りなくてノイジーになったりすることがあるみたいです。USBハブなんか経由せず、ダイレクトに接続すること。

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 そしてPCはYっちの旧式Mac Bookを使用します。CPUは2.16GHzのCore2 Duo、OSも10.6 Snow Leopardまでしか上げられない。メモリも1GBです。いまとなってはショボイスペックですが、これでも十分マルチトラックのレコーディングが可能です。ただし、Garage Bandのオーディオレゾリューション設定で24ビット品質を選択すると、確実にハードディスク回転数不足でエラーとなります。ですので16ビットのCD品質でしか録音ができないことになります。また、複雑な操作をしていると録音中に上記エラーで止まることがあります。余計なアプリケーションは起動しないようにし、Time Machineの自動バックアップなんかも止めたほうがいいみたいです。今回使ったGarage BandはOS-Xに無料で付いてくる(正確には違うが)初心者用音楽制作ソフトウェア。音質なんかもそれなりだろうとナメてましたが、これがことのほか使えることが判明。音質も悪い訳じゃないし、プラグインのエフェクトも特に見劣りするわけじゃない。実はプロのクリエーターも使ってるらしいです。この辺りの詳細は次回以降に書くことにします。ただ、音源データの細かい手直しや、パンチインの処理、マスタリング機能はやはり不十分なので、オーディオ編集ソフトウェアのWaveLab Elements7を買いました。オーディオ波形を直接見ながら編集できます。廉価版ですが、素人の音源いじりには十分な機能、音質も良く、Windows時代からずっと愛用してます。ついにMacにも対応しましたね。ソフトウェアとしてはちょっとお高いんですが、買っちゃいました。
 Mac Bookで録音をするというのは、やはり手軽だから。僕のメインのMac Miniでも当然録音できるんですが、Mac Bookでの環境を整えられれば、こいつとQUAD-CAPTUREとケーブル類をカバンに入れればどこへでも録音に行けるということです。実際、町田のピアニスト宅にはこれらを持参して録音しました。大きめのカバン一個で録音に行けるなんて、一昔前までは考えられなかったよね。
 録音はギターから、ということになりました。歌も入っていない空白のトラックにひとりで黙々と録音することになります。煮詰まると結構辛い作業です。ほとんどの曲ではクリック音(ドンカマ)を聞きながらのレコーディングとなります。ヘタクソギタリストの僕はメトロノームが超苦手。今回のレコーディングではかなり上達せざるを得ないことになりました。これは収穫でしたね。
 普通に考えると密閉型のヘッドフォンを装着して自分の音のフィードバックを聞きながら、ドンカマに合わせて録音、ということになるのですが、これがやってみるとかなり厄介。自分の楽器の音はやはり直接聞きながらじゃないと、どうしてもノリやニュアンスが出せないんですよ。こんなふうになるとは思ってもみなかった。かといってオープンタイプのヘッドフォンを使って自分の生音を聞きながら録音しようとすると、ドンカマのクリック音をマイクが拾っちゃう。こりゃ困った。
 実はプロのミュージシャンも同じだそうで、ブルースハープの松田幸一さんにアドバイスをいただきました。ドンカマのクリック音はできるだけ小さく、そして片チャンネルだけにする。で、密閉型のヘッドフォンの片方を耳から外し、外した側の耳で自分の楽器の生音が聞けるようにする。Garage Bandではクリック音を片方だけ消すことができないので、さっきの写真のようにL側のフォーンジャックを抜いていたわけです。これで違和感なくレコーディングオーケー、あとは腕だけだ(笑)
 それでは主な楽器を紹介。曲によって使い分けたり、左右チャンネルでキャラクターの異なるギターを使うように心がけています。
13032300.jpg メインギターのNorthwood R-70-OM。ローズウッドサイド/バックのOMサイズ。きらびやかな音が特徴。ソロギターに向くが、歌伴ではフォスファーブロンズ弦だとキラキラしすぎるのでブロンズ弦を張って使用。ゆったりとしたアルペジオの曲で使用。
13032405.jpg Taylor 420。メイプルサイド/バックの80年代のドレッドノートモデル。ずしんとした低音とカラリと乾いた音が特徴。軽快な3フィンガーや、カッティングの曲で使用。
13032406.jpg 安物のEpiphoneの12弦ギター。もちろん合板だけど意外といい音がする。普段ライブなんかではなかなか出番はないけど、今回は結構活躍。ただし12弦はコードを押さえるのがしんどい。指もボロボロになる。フラットピックでアルペジオを弾いてアンサンブルに使うと奇麗。
13032407.jpg ヴォーカルのありのぶ君の歌は叙情派フォーク系。じめっと湿った歌が多い。チープなギターサウンドが欲しくて、なんとギブソンを買ってしまった。1960年のオールド物のGibson LG-1。ストロークよりフィンガーピッキングでブルースなんか弾くと、最高にそれっぽいんだが、アンサンブルのバックで3フィンガーなんか弾くと、ちょっとバンジョーっぽいぽこぽこ音でかわいい。マイナーでスローテンポの曲で使用。味が出ましたね。
 というわけで次回以降は実際のレコーディングの方法を書いてみます。



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