Garage Bandで簡単宅録(2)

2013年03月27日


 CD制作はプラモデルみたいなもんだと思います。ある程度制作途中で起こるであろう現象を予想しておいて、しかるべき準備をする。それが予め全部わかっているのがプロフェッショナルとの違いなんだよな、とも思います。曲だってもちろんすべてのスコアが揃っていて、すべての楽器の効果が予想できる、なんて人はあまりいないと思います。おぼろげに録音して、ああダメだ、とかそれいいじゃん、なんていいながらじゃあこれはピアノ入れてみようかとか、エレキギターのリード入れよう、なんて感じなのが実情だと思います。だから後で起こるであろうことをある程度予想してトラック録音しておかないと、後々取り返しのつかないことになったりするかもしれません。今回、僕がやってみて思ったことをちょっと書いておきます。

  • ドンカマを使うかどうか
     ドンカマとはメトロノームのこと。コルグが1963年に出したドンカマチックというリズムマシンが語源だとか。それはともかく、Garage Band内蔵のメトロノームを使うかどうかというのは予め決めておく必要がある。エンディングならまだしも、曲の途中にリタルダントやブレークがあるときは多いに問題だし、ルバート演奏だとまずドンカマは使えない。プロはこういうテンポ可変の曲のために時間をかけて、わざわざ打ち込みをすることもあるらしいけど。ドンカマを使えばもちろんリズムキープはできるが、われわれ素人にとっての問題は演奏者がそれにちゃんと合わせて録音できるかということ(笑)
     やってみると、演奏中にドンカマのクリック音とずれている自分に気づいて、あわてて修正、なんてやると、後でプレイバックしてみるとビートがヨレヨレで凹みまくるっちゅーパターンが多かった。イヤ本当に練習になりましたわ。本当にこれは憂鬱なので、自信がないひとはドンカマ使わないで、ノリ一発!という選択肢も考えておいた方がいいかも。いずれにせよ、最初のトラックの録音するとなると歌もないので、ひたすら譜面を見ながら小節数を数えてゆく辛い作業となる。覚悟すること。
     それと一番最初のトラックを録音するときには録音ボタンをクリックしてからしばらく置いてから(←これ大事)、口で「ワン・ツー・スリー・フォー」というカウントを録音してから演奏を始めないと、オーバーダブのときに次の楽器の出だしがわからなくて非常に困る。これ凄く大事。
  • ドンカマを使わないとすると
    今回やってみたのは過去のありのぶ君のライブ音源をiPhoneで聞きながら、それに合わせて録音する、という手法。ライブだから表現力もいいし、歌もあるから録音も楽。ただし、これだと例の「ワン・ツー・スリー・フォー」というカウントが無いから、一発目で入れない。別の人間がiPhoneを持って、「ワン・ツー・スリー・フォー」とカウントしてからタイミングよくiTuneの再生ボタンを押す、みたいなアクロバティックなこともやったりしました。
     それでも、途中にブレークがあったり、ルバートがあったりする曲のときはタイミングをどう取るのか決めておかないと後で慌てる。ありのぶ君の曲にはこれが多くて、かなり苦労した。タイミングはある程度であれば波形整形ソフトで誤摩化せるが、基本的には録り直しが必要、と思っておいたほうがよい。
  • チューニング
     オーバーダブであるならば、チューニングはきっちりやらないといけない。ギターだとカポタストを使う場面もあるだろう。カポタストをはめるとチューニングが狂う、ということを知らない人も多いけど、カポタストをしたらチューニングのやり直しは当たり前。普通のチューナーはディフォルトでA=440Hzとなってるけど、本当にそれでいいの?スタジオのキーボードやピアノは、最近ではA=442Hzでチューニングしてあることが多いので、これを予め確認しておかないと、後からの修正は難しいと思います。それと、弾き語りでよく使われるのが、ブルースハープ。これもA=441〜442Hzらしいですよ。ライブなんかで普段テキトーにやっているひとも、録音では気をつけた方がいい。
  • どこで録音するの?
     僕の場合は自宅マンションの自室がメイン。キーボードなんかのライン録音ならばどこでやっても同じだけど、マイク録りだったらやっぱり全部の楽器はできれば同じ環境で録音しておいたほうがいいかもね。スタジオや、カラオケボックスでやればいいや、なんて思ったりするけど、意外とそういうところも音漏れがあって隣の音が聞こえてきたりするよね。コンデンサーマイクだと確実に拾っちゃう。ちなみに僕の部屋で大声を出したら、変な金属音の共鳴音がする。いろいろ調べてみたら、照明のホーロー製のシェードが共鳴していた、なんてことがありました。もちろん近所迷惑にならないようにね。ギタリストならマイクの前の椅子がぎしぎし言わないよう、オイルを差す必要もあるかもしれない。ヴォーカルなら立って歌うか、座って歌うか。。。。等
 そのへんがクリアできたら、機材のセッティングです。これも実際やってみるとあれこれ問題が起きるのよね。ああ、ヘッドフォンのケーブル短いじゃん、とか、USBケーブルも届かないよ、とか。本番やるまえに一度リハーサルをやっておくことをお勧めします。僕の場合、録音し始めたらMacBookのハードディスクが唸りを上げて回り始めたので、マイクで拾わないよう、遠ざけました。なので録音時には、
  1. Garage Bandの録音ボタンをクリック
  2. すばやくヘッドフォンをしつつ、椅子に座ってギターを構える
  3. カウントを待って演奏開始
って、そんなこと当たり前だけど、演奏を失敗しまくるとこれを繰り返すことになる。やってみるとかなり大変ですよ。だから録音をオンしてからカウントまではちょっと時間をおいておいたほうがいい。じゃないと、楽器を構える時間がないのよ、ははは。

 これがGarage Bandの画面。キーはFmaj、テンポは♩=77に設定してあることがわかります。なお、前回書いたように録音用のMacBookの性能がショボイため、「環境設定」「詳細」で「オーディオレゾリューション」を「標準」の16ビット録音/書き出しに設定しておかないと、エラーが出まくったりしました。(※画面をクリックすると拡大します。)
 Garage Bandは初心者用ソフトということで余計な機能が結構付いてます。演奏データのテンポとピッチ(音程)を自動的に修正するという「オーディオリージョン」の機能がそれ。打ち込みを使わない生録系の僕らにとっては邪魔でしょうがない機能。知らない間に赤矢印の「テンポとピッチに従う」に勝手にチェックが入っていたりするので要注意。なんか変なコーラスがかかったような音でびっくりして調べると、コイツが原因だったりします。
 トラックの追加は、もちろん「リアル音源」で行います。キーボードのようなステレオ録音をする場合にはトラックを2つ用意し、LRを分けて録音できるようにしますが、このときに「トラック」「マルチトラック録音を可能にする」を有効にしておく必要があります。

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 マイクの指向性スイッチは「単一指向性」、裏側のローカットスイッチもオンにしておきます。こういうの忘れると、後で泣く。
 用意ができたらいよいよギターの録音です。前回書いたようにドンカマのクリック音はヘッドフォンの右耳だけから出るようにし、左耳で自分の生音が聞ける状態にします。演奏中、ギターとマイクの距離が変わったりすると音量にモロに差が出ますから、いろいろ動いちゃうひとは注意が必要です。ベストなコンディションで望みたいところですが、ドンカマのクリック音を聞いた瞬間、心臓ドキドキ、手に汗握り、出足からピッキングをミスったりするんじゃないでしょうか?少なくとも僕はそうでした。いつもは簡単なあのフレーズがメロメロになったり、6弦を弾くところを5弦弾いちゃったり、結構大変。何度も何度も録音し直しているとモチベーションも落ちてきます。僕は今回一気に13曲録音してみて、やっと慣れました。それでも100%のパフォーマンスは発揮できないと思います。練習中、かなりラクショーな状態でも録音ではミスりますから、覚悟しておいた方がいいかも。スタジオミュージシャンってすげーな、みたいな。
 ちょっとしたミストーンならパッチをあてれば誤摩化せます。あまりシビアに考えず、なるべく楽な気持ちになったほうがいいです。ミストーンを出しても気にしないで弾ききったほうが、いい録音ができます。後で修正できますからね。ただし修正できないのは、ノリ、リズム、ビートの類い。ヨレヨレのリズムは修正は不可能です。今回はもうそれこそ何度も何度も録り直してます。ああ、オレってリズムダメだなぁ、と自己嫌悪の嵐(涙)
 ではパッチの実際です。「あ、やっちゃった」と思ったら、すぐプレイバック、問題の箇所を発見して下さい。ミストーンの発見、パッチの録音は「すぐその場」が基本です。時間が経ってしまうと録音の条件、演奏者のコンディションが全部変わってきますから修正ができなくなります。録音が完了したらすぐにパッチに取りかかります。Garabe Bandで新たにパッチ用のトラックを追加します。設定も本録音のトラックと同条件に設定。パッチはさっき自分が演奏した音源を聞きながらの録音になります。自分のミスに引っ張られて、また間違わないように(笑)ミスした部分のしばらく前から録音、演奏をはじめるようにすると不自然さがなくなります。その場でプレイバックして問題が無ければ録音終了。録音にはある程度の妥協は必要だと思います。完全を求めるといつまでたっても終わんないぞ。
 次回はパッチの処理を含め、個別トラックの波形編集について書いてみます。


コメント

>ドンカマのクリック音を聞いた瞬間、心臓ドキドキ、手に汗握り、出足からピッキングをミスったり

まさに『録音あるある』(笑)

おお、宅録の大先輩、いちのへ君じゃないですか。
なにか気がついたことがあったら教えてね。

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