'79 MG Midget 1500 〜華麗なるクルマ遍歴シリーズ(2)〜

2009年08月30日

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 デルタを買った僕は情報収集のため、当時パソコン通信ではポピュラーだったニフティーサーブの輸入車フォーラムに出入りするようになった。夜のチャットやらオフ会やら、まぁ他愛もない集まりだった。ある時、箱根のヤギさんコーナーでのオフ会へ出かけたときに僕のデルタのラジエーターホースが炸裂した。イタ車やらフランス車の連中は何もできなかったが、ここで応急処置に駆けつけてくれたふたりは、英国車、MGミジェット遣いだった。ひとりは、みんなでレストランでご飯を食べている最中もワイヤー・ブラシで点火プラグを磨いているような変なヤツだったが、このトラブルに際し工具箱からいろんな物を出してきてびっくりした。いろんなサイズのホースクランプ、針金、ゴムホースの切れ端等々。そのときにビーズガレージのTさんの話を思い出した。「MGとかカニ目に乗ってるひとってのは、本当のクルマ好きだと思いますよ」や、本当にそう思った。クルマをいじれるようになりたい、と思った。結局僕のデルタはワイヤー・ブラシ君の応急処置のおかげで、埼玉の家までたどり着けた。そうか、英国車か。

 ある日、いつものようにニフティサーブのチャットをやっていたら、「MGミジェットを10万円で売りたいという人がいるんだけど興味ある?」と持ちかけられた。ビョーキの始まりである。MGである、ミジェットである、でも10万円。。。。どんなゴミグルマかと思って上尾の指定場所まで行ってみたら、なんと見た目ピカピカである。オーナー氏は結婚するために惜売するのだという。あちこちに査定してもらったが0円だったのだそうだ。ただ、問題があってバックギアが入りにくいのだと言う。オーナー氏の隣に乗せてもらって良くわかった。この時代の英国車はトランスミッションのシンクロメッシュが弱い。ちゃーんと回転を合わせないとクラッチを切っていてもギアチェンジが難しいのである。ものぐさにシフトダウンでもしようものなら「ガチン!」という感じでシフトレバーからしっぺ返しを食らう。僕はこのクルマのおかげでダブルクラッチを練習した。ミジェットで3→2シフトダウンがバッチリ決まった時のうれしさったら無かった。で話を元に戻す。この、オーナー氏、交差点で3→2へのチェンジをしようとしたときにガキン!と言った。それでなんとそのまま力ずくで叩き込んだのである。「あ、痛、ヤメロ」と僕は心で思った。そんなわけで、バックギアもシフトレバーを手で押さえてないと抜けてしまうシロモノだった。
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 でも例によって舞い上がっていた僕はその場で10万円を渡し、即決で乗ってきてしまう。その帰り道がなかなか大変だった。運転しているとものすごく排ガス臭いのである。幌をしていると目がちかちかするし、髪の毛はばりばりの大騒ぎ。あと、ウインカーレバーもバカになっていて、手で押さえていないと元に戻ってしまう。でもそのくらいなら可愛いものだった。ある晩、富士見-川越有料道路に出て3速へシフトしたとたん、だだだだだ!というもの凄い振動、うわーどうした?と思ったら「ばっき〜ん、かららん、かららん」という音とともに即座にエンコ。ミジェットはFRなのでフロントのエンジンとリアのトランスミッションをプロペラシャフトというもので繋いでる。これのジョイントがすっ飛んだのであった。これで通算2度めのエンコ。JAFのにーちゃんと世間話しながら帰ってきた。
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 ミジェットは自分でレストアする!と決意していたので市ヶ谷の英国車パーツ屋でジョイントを買ってきて修理、それともの凄い排気漏れはエキゾーストマニホールドを止めているスタッドボルトが折れているためと判明、これも交換。MGミジェットは初期型はミニと同じエンジンを積んでいたのだけれど、この1500は諸事情によりトライアンフの「クソ」エンジンを積んでいた。非力でトラックのようなこのエンジン、ストロンバーグなるダメダメクソ・キャブレターのおかげで箱根では観光バスにあおられる始末。まぁ、ただ高速で80km/hも出すと、着座位置の低さも相まって、もの凄いスピード感。ステアリング・センターがないので、回頭性は良いが高速安定性は極めて悪かった。ウインドウシールドも低いからオープンで乗ってると石が飛んできたらアウトですね。風の回り込みも凄いので髪の長い女の子は乗せられない。でもね、もの凄く楽しい。イギリス人ってバカだなぁと思うよ、コレ。

 このクルマは車検は自分で行った。灯火類のチェックがあるんだけどハザードのスイッチが壊れてたので、こっそりダッシュボードの下でギボシ端子をつないでクリア。へへへ。そんなこんなで楽しい毎日であったのだが、ある日ついに完全にバックギアに入らなくなった。幸いミジェットは車重が600kg足らずなので一人で押すのも楽ちん。ファミレスなんか行くと手で押して車庫入れした。しかし、そのうちオルタネーターが逝き、ラジエーターが逝き、ウォーターポンプが逝き、セルモーターが逝き。。。なんてやってるうちにシトロエン2CVが欲しくなっちゃったので1997年の8月に15万で売っちゃった。次のオーナーは完璧に直して別荘でのアシにする、なんて言ってたなぁ。



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